日本の人手不足解消に向け、外国人労働者の受け入れが拡大しています。その中でも主要な制度である「技能実習」「特定技能」「技術・人文知識・国際業務(技人国)」について、それぞれの違いを詳しく解説し、企業のニーズに合った制度選びを支援します。
3つの制度の概要
制度名 | 目的 | 対象者 | 主な業種 | 在留期間 | 更新可否 | 家族帯同 | 雇用形態 |
技能実習 | 開発途上国の人材育成 | 開発途上国の若者 | 製造業、農業、建設、介護など | 1〜5年 | 不可 | 不可 | 直接雇用 |
特定技能 | 人手不足の解消 | 技能・知識を持つ外国人 | 外食、建設、介護、宿泊、製造業など16業種 | 5年(特定技能1号)/ 無期限(2号) | 1号不可、2号可 | 1号不可、2号可 | 直接雇用 |
技人国 | 専門的な知識・技術を活用 | 大学卒業者・実務経験者 | IT、エンジニア、通訳、営業、教育など | 1年・3年・5年の更新制 | 可 | 可 | 直接雇用 |
それぞれの制度の特徴と適用業種
1. 技能実習制度
技能実習制度は、開発途上国の人材育成を目的とし、日本の企業で働きながら技術を学び、帰国後の母国発展への貢献を期待する制度です。
適用業種
- 製造業(食品加工、金属加工など)
- 農業(野菜・果物栽培、畜産など)
- 建設業(土木、鉄筋施工など)
- 介護
- 漁業
メリット
- 低コストで一定期間の労働力を確保できる
- 受け入れ企業は政府の支援を受けられる場合がある
デメリット
- 技能習得が目的のため、単純労働に制限がある
- 在留期間に制限があり、長期雇用は難しい
- 監理団体を通じた受け入れが必要で手続きが煩雑
2. 特定技能制度
特定技能制度は、人手不足が深刻な16業種において、即戦力となる外国人労働者を受け入れるために2019年に創設された制度です。
適用業種
- 外食業
- 宿泊業
- 建設業
- 介護業
- 製造業(機械、金属加工など)
- 漁業、農業
- その他、人手不足が深刻な16業種
メリット
- 技能実習と異なり、労働力として活用できる
- 直接雇用が前提のため、人材の定着が期待できる
- 一部業種では特定技能2号により無期限滞在が可能
デメリット
- 技能試験や日本語試験の合格が必要
- 1号では家族帯同が認められない
- 対象業種が限定的
3. 技術・人文知識・国際業務(技人国)
技人国は、専門的な知識や技術を持つ外国人を受け入れるための在留資格です。
適用業種
- ITエンジニア
- 機械・電気技術者
- 通訳・翻訳
- 国際業務(海外営業、貿易など)
- 教育(語学教師など)
- その他、専門知識や技術を要する業務
メリット
- 在留期間の更新が可能で長期雇用が可能
- 家族帯同が認められる
- 業種の幅が広く、柔軟な雇用が可能
デメリット
- 大学卒業(または一定の実務経験)が求められるため対象者が限られる
- 資格要件が厳しい
どの制度を選ぶべきか?
企業が外国人労働者を受け入れる際は、以下のポイントを考慮して最適な制度を選ぶ必要があります。
企業のニーズ | 最適な制度 |
短期間の単純労働力が必要 | 技能実習 |
長期間の労働力が必要(ただし単純労働) | 特定技能 |
高度な技術や専門知識を持つ人材が必要 | 技人国 |
例えば、外食業や介護業で即戦力となる人材がほしい場合は「特定技能」、IT企業やエンジニアを求める企業は「技人国」、工場や建設業で短期的な労働力を確保したい場合は「技能実習」が活用できます。
まとめ
「技能実習」「特定技能」「技人国」は、それぞれ目的や適用範囲が異なるため、企業が求める外国人労働者の像によって最適な制度が異なります。
- 技能実習:開発途上国の人材育成を目的とし、長期雇用には不向き
- 特定技能:日本の人手不足解消を目的とし、即戦力として活用可能
- 技人国:専門知識や技術を持つ外国人向けの制度で、長期雇用や家族帯同が可能
企業が外国人材を活用する際は、各制度の特性を理解し、最適な選択をすることが重要です。