「また失踪!?うちの会社、またかよ・・・」
私が人事担当をしている会社では、ここ数年、技能実習生の失踪が後を絶ちません。
同じような悩みを抱えている企業の方も多いのではないでしょうか?
令和5年には、技能実習生の失踪者数が過去最多を更新したというニュースもありました。
令和5年における技能実習生の失踪者数は9,753人であり、これまでで最も多い数となった。
しかも、技能実習生数に占める失踪者数の割合は1.9%で、例年と同程度の推移。
つまり、技能実習生100人あたり約2人が失踪している計算になります。
技能実習生の失踪は、企業にとって大きな損失です。
失踪した技能実習生の補充には、時間と費用がかかります。
また、失踪原因によっては、企業の信頼を失う可能性もあります。
そこで今回は、技能実習生の失踪について、私自身の経験も踏まえながら、より現場目線でお伝えできればと思っています。
目次
技能実習生の失踪者数、国籍別・職種別の内訳
まずは、技能実習生の失踪者数について、国籍別・職種別の内訳を見ていきましょう。
国籍別
最も多いのはベトナムで、全体の56.2%を占めています。
次いで、ミャンマーが18.1%、中国が8.4%となっています。
1位:ベトナム(56.2%)
2位:ミャンマー(18.1%)
3位:中国(8.4%)
職種別
最も多いのは建設関係で、全体の47.1%を占めています。
次いで、農業関係が8.6%、食品製造関係が8.5%となっています。
1位:建設関係(47.1%)
2位:農業関係(8.6%)
3位:食品製造関係(8.5%)
失踪理由の推測と採用時に確認すべきこと
技能実習生が失踪する理由としては、以下のようなものが考えられます。
- 賃金:より高い賃金を求めて失踪するケース
- 労働時間:長時間労働や休日出勤が多いなど、労働条件が悪いケース
- 人間関係:職場の人間関係がうまくいかないケース
- 文化・生活:日本の文化や生活習慣になじめないケース
これらの理由から、採用時に確認すべきことが見えてきます。
- 賃金:賃金体系や残業の有無について、明確に説明しましょう。
- 労働時間:1日の労働時間や休日数について、具体的に伝えましょう。
- 人間関係:職場の雰囲気や従業員同士の交流について、紹介しましょう。
- 文化・生活:日本の文化や生活習慣について、事前に説明しておきましょう。
失踪後の所在把握状況とミャンマーの緊急避難措置
令和5年の失踪者については、技能実習実施困難時届出書受理日から3月以内に約27.3%の所在が把握できています。
しかし、残りの72.7%については、まだ所在が分かっていません。
また、ミャンマー人については、技能実習実施困難時届出書受理日以後3月以内に約99.7%の所在が把握できています。
その理由としては、大多数がミャンマーの情勢不安に対する緊急避難措置として設けた「特定活動」への在留資格変更許可手続を受けていることが挙げられます。
緊急避難措置の課題と対応策
この緊急避難措置には、以下のような課題があります。
- 技能実習を継続するための必要な措置を講じることなく、誤用・濫用的に緊急避難措置が利用されている。
- 安易な申請を防ぐための対策を講じる必要がある。
そこで、以下のような対応策が取られています。
- 技能実習を修了していない技能実習生からの在留資格変更許可申請に対し、技能実習生本人及び監理団体等に確認を求める。(p.4)
- 自己の責めに帰すべき事情によって技能実習を途中で終了し、残余の在留期間がある技能実習生に対しては、緊急避難措置に係る「特定活動」への在留資格の変更を認めない。(p.4)
技能実習生の失踪原因と対策:企業が知っておくべきこと
技能実習生の失踪は、企業にとって大きな損失です。
失踪した技能実習生の補充には、時間と費用がかかります。
また、失踪原因によっては、企業の信頼を失う可能性もあります。
ここでは、技能実習生の失踪原因と対策について、企業が知っておくべきことをまとめました。
1. 賃金・労働条件
【原因】
- 低賃金:技能実習生の賃金は、日本の最低賃金と同等以上である必要があります。しかし、実際には最低賃金を下回るケースや、残業代が支払われないケースがあります。
- 長時間労働:技能実習生の労働時間は、日本の労働基準法で定められています。しかし、実際には長時間労働や休日出勤が多いケースがあります。
- 賃金未払い:技能実習生の賃金が支払われないケースがあります。
【対策】
- 適正な賃金の支払い:技能実習生に、日本の最低賃金と同等以上の賃金を支払いましょう。また、残業代は必ず支払いましょう。
- 労働時間の管理:技能実習生の労働時間を適切に管理し、日本の労働基準法を遵守しましょう。
- 賃金台帳の作成:技能実習生の賃金台帳を作成し、賃金の支払い状況を記録しましょう。
2. 人間関係
【原因】
- 言葉の壁:技能実習生は、日本語が十分に話せない場合があります。そのため、コミュニケーション不足や誤解が生じやすくなります。
- 文化の違い:技能実習生は、日本と文化や習慣が異なる場合があります。そのため、日本の文化や習慣になじめない場合があります。
- 差別:技能実習生が、差別的な扱いを受けるケースがあります。
【対策】
- 日本語教育:技能実習生に、日本語教育の機会を提供しましょう。
- 異文化理解:技能実習生に、日本の文化や習慣について説明しましょう。
- 相談窓口の設置:技能実習生が相談できる窓口を設置しましょう。
3. 生活環境
【原因】
- 住居:技能実習生の住居が、劣悪な環境であるケースがあります。
- 食事:技能実習生が、食事に困るケースがあります。
- 医療:技能実習生が、病気やけがをした場合に適切な医療を受けられないケースがあります。
【対策】
- 住居の提供:技能実習生に、安全で快適な住居を提供しましょう。
- 食事のサポート:技能実習生に、食事のサポートを提供しましょう。
- 医療体制の整備:技能実習生が、病気やけがをした場合に適切な医療を受けられる体制を整備しましょう。
【重要】技能実習制度の改正点
2019年4月1日に、改正入管法が施行され、技能実習制度が大きく変わりました。
改正点としては、以下の点が挙げられます。
- 新たな在留資格「特定技能」の創設:
- 技能実習生の在留期間の延長:
- 監理団体の許可制:
- 技能実習計画の認定:
これらの改正点により、技能実習制度はより厳格化されました。
企業は、改正内容をしっかりと理解し、適切な対応を取る必要があります。
まとめ:技能実習生の失踪は他人事ではない!
技能実習生の失踪は、企業にとって大きなリスクです。
しかし、適切な対策を講じることで、失踪リスクを減らすことができます。
この記事を参考に、技能実習生の失踪原因と対策について理解し、あなたの会社で適切な対策を講じてください。
具体的には、以下の3点に注意して人材採用を行いましょう。
- 賃金、労働時間、人間関係