社説:数字で見るインドネシアの変貌と日本の労働力戦略の転換

インドネシア経済が力強い成長を続けている。豊富な天然資源と若い労働力を背景に、GDPは年平均5%以上の成長を遂げ、2023年には1兆3,000億ドルを超えた。この数値は、ASEAN地域において突出しており、インドネシアが経済大国への道を歩んでいることを示している。

しかし、その一方で、インドネシアは依然として多くの労働者を海外に送り出しており、日本もその受け入れ国の1つである。2023年のインドネシアからの技能実習生数は約8万人で、全技能実習生数の約3割を占めている。

しかし、この状況は今後も続くのだろうか。インドネシアの経済成長は、国内の雇用機会を増やし、労働者の賃金上昇を促すだろう。実際、インドネシアの平均賃金は過去10年間で年平均10%以上上昇しており、海外で働くよりも、自国でより良い条件で働きたいと考える労働者が増えるのは必然である。

インドネシア政府も、高付加価値産業の育成やインフラ整備に力を入れており、国内の雇用創出を加速させている。2023年のインドネシアへの海外直接投資額は450億ドルを超え、過去最高を記録した。これらの投資は、新たな雇用を生み出し、労働者の技能水準を向上させるだろう。

日本はこれまで、インドネシアからの労働力を安価な労働力として捉えてきた側面がある。しかし、もはやそのような考え方は通用しない。インドネシアの労働者の技能水準は向上しており、彼らはより高い賃金とキャリアアップの機会を求めている。

実際、2023年に日本で働いていたインドネシア人技能実習生の平均月収は15万円程度であったが、インドネシア国内の平均賃金は都市部では既にそれを上回る水準に達している。

日本企業は、インドネシア人労働者を単なる労働力としてではなく、長期的なパートナーとして捉え、彼らの能力開発やキャリア形成を支援する必要がある。また、外国人労働者に依存するだけでなく、国内の労働生産性を向上させ、多様な人材が活躍できる職場環境を整備することが不可欠である。

インドネシアの変貌は、日本の労働力戦略の見直しを迫っている。安易な労働力確保に頼るのではなく、多様な人材が活躍できる持続可能な社会を築くことこそ、日本の未来を切り拓く鍵となるだろう。

今後の展望

インドネシアのGDPは今後も年平均5%以上の成長を続け、2030年にはASEAN最大の経済大国となる見込み。
インドネシアの平均賃金は今後も上昇を続け、海外で働くよりも、自国でより良い条件で働きたいと考える労働者が増えるだろう。
日本企業は、インドネシア人労働者の能力開発やキャリア形成を支援し、長期的なパートナーシップを築く必要がある。
日本は、外国人労働者に依存するだけでなく、国内の労働生産性を向上させ、多様な人材が活躍できる職場環境を整備する必要がある。
参考資料

外務省:インドネシア基礎データ
国際協力銀行:インドネシア投資情報
大和総研:インドネシア:産業の高度化は可能か
ニッセイ基礎研究所:インドネシア経済:24年10-12月期の成長率は前年同期比+5.02%~消費が持ち直して再び5%成長に
JETRO: 2024年のGDP成長率は5.03%、政府目標に未達(インドネシア)