東アジアに位置し、経済的にも密接な関係を持つ日本と台湾は、高度経済成長を経て先進国・地域へと発展した一方で、共通して人口減少と少子高齢化という深刻な課題に直面しています。また、地理的な近さや経済的な結びつきから、労働力の相互交流も活発であり、外国人労働力の受け入れは両国・地域にとって重要な政策課題となっています。
しかし、歴史的背景、社会構造、経済状況の違いから、両国・地域はこれらの課題に対するアプローチにおいて異なる選択をしています。日本と台湾を比較することは、それぞれの現状を客観的に把握し、未来への教訓を得る上で非常に有益です。
目次
日本:深刻化する人口減少と外国人労働力への依存
日本の人口減少は、世界でも類を見ないスピードで進行しています。少子高齢化は社会保障制度を揺るがし、地方の過疎化は地域社会の存続を脅かしています。こうした状況下で、日本は外国人労働力の受け入れを拡大していますが、その道のりは決して平坦ではありません。
現状:
- 外国人労働者数は増加傾向にあるものの、受け入れ体制は未だ不十分。
- 技能実習制度や特定技能制度が主な受け入れルートだが、人権侵害や制度の複雑さが課題。
- 社会的な受容性の低さも、外国人労働者との共生を阻む要因となっている。
- ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、ネパールなどからの労働者が多い。
- 技能実習生や特定技能労働者として、製造業、建設業、農業、介護などの分野で働いています。
課題:
- 受け入れ体制の不備:住居、言語、医療など、生活環境の整備が急務。
- 社会的な受容性の低さ:偏見や差別を解消し、多文化共生社会を実現する必要がある。
- 法制度の複雑さ:制度の透明性を高め、外国人労働者と企業の双方にとって分かりやすい制度設計が求められる。
台湾:積極的な受け入れと定住促進
台湾も少子高齢化に悩む地域の一つですが、日本よりも積極的に外国人労働力の受け入れを進めています。多様な受け入れルートを確立し、定住促進策を講じることで、外国人労働者が地域社会に溶け込みやすい環境を整備しています。
現状:
- 製造業、建設業、介護分野を中心に、多くの外国人労働者が活躍。
- 多様な受け入れルートと定住促進策が特徴。
- 地域社会との連携により、外国人労働者との共生が進んでいる。
- インドネシア、ベトナム、フィリピン、タイなどからの労働者が多い。
- 製造業、建設業、介護、家事サービスなどの分野で働いています。
- 2023年6月から低熟練外国人労働者の受け入れ制度が拡大され、製造業の受け入れ枠が広がり、一般民間建設業や林業の新規受け入れが解禁され、農業の受け入れ人数も増加しています。
- 中熟練外国人労働者に関しては、2022年4月に移工留才久用方案に基づく新しい制度が導入され、長期の在留が許可されています。
特徴:
- 多様な受け入れルート:単純労働者から高度人材まで、幅広い人材を受け入れ。
- 定住促進策:住宅、教育、医療など、生活全般にわたる支援を提供。
- 地域との連携:地域住民との交流を促進し、相互理解を深める。
比較から見えてくるもの:日本が学ぶべき教訓
日本と台湾の比較から、日本が学ぶべき点は数多くあります。
- **危機意識の共有:**人口減少を国家的な課題として捉え、社会全体で危機意識を共有する必要がある。
- **政策の迅速な実行:**効果的な政策を迅速に実行に移し、外国人労働者との共生社会を構築する必要がある。
- **社会的な受容性の向上:**多文化共生に向けた教育や啓発活動を強化し、外国人労働者に対する偏見や差別をなくす必要がある。
- **地域社会との連携:**地域住民との交流を促進し、外国人労働者が地域社会に溶け込みやすい環境を整備する必要がある。
- **多様な受け入れルートの確立:**日本の産業構造や人材ニーズに合わせて、多様な受け入れルートを検討する必要があります。
- **定住促進策の強化:**外国人労働者が安心して長く働けるよう、住居、教育、医療などの支援を充実させる必要があります。
両国・地域が抱える共通の課題
両国・地域は、外国人労働者の権利保護や社会統合の促進など、共通の課題も抱えています。
- **外国人労働者の権利保護:**労働条件の改善や人権侵害の防止など、外国人労働者の権利保護を強化する必要がある。
- **社会統合の促進:**言語教育や文化交流の機会を増やし、外国人労働者が地域社会に溶け込みやすい環境を整備する必要がある。
- **法制度の整備:**制度の透明性を高め、外国人労働者と企業の双方にとって分かりやすい制度設計が求められる。
未来への展望:共生社会の実現に向けて
人口減少と外国人労働力という共通の課題に対し、日本と台湾はそれぞれの道を歩んでいます。しかし、両国・地域が目指すのは、多様な人々が共に生きる共生社会の実現です。そのためには、互いの経験から学び、協力し合うことが不可欠です。